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研究紹介 第一線で活躍している研究者と研究をご紹介。

MEMSデバイス MEMSデバイスにより、半導体の新たな活用領域を切り拓く

ナノ材料・デバイス
鈴木 和拓
2002年入社
情報通信工学専攻

MEMS技術をあらゆる分野に応用

鈴木 和拓・イメージ 半導体デバイスの高付加価値を実現する、MEMSデバイスの開発を行っています。MEMSとはMicro Electro Mechanical Systemsの略で、電気的かつ機械的な機構を半導体基盤上に作るもの。知られているところでは、自動車のエアバッグなどに入っている加速度センサーなどに用いられています。事故の衝撃などの加速度は、可動部分で検知する必要があります。MEMSでは半導体ベースで可動部分と電極を作りこめるので、従来より、非常に小型、軽量で高性能な加速度センサーが可能になるわけです。ただし、可動部があるということは立体構造にしなくてはならず、MEMS製作には極めて高度な微細加工技術が必要とされます。

 我々がMEMSで新たに何を作っているかというと、まず1つは光MEMSマイクです。今、世の中にMEMS技術を使ったマイクが出てきていますが、それらはコンデンサマイクなんです。先ほど説明したようにMEMSには固定側の電極ともう1つ可動式の電極があり、電極が振動板を兼ねています。コンデンサマイクでは音が入ると音圧で振動板が動き、それによってキャパシタンスが変化することで音波を検出します。これに対し、我々の開発した光MEMSマイクは、振動板が振動するのを、コンデンサの容量変化ではなく、外部から照射したレーザー光の反射パターンの変位により光学的に検出するんです。

 我々はさらに、この光MEMSマイクの技術を指向性マイクに応用しました。光マイクになると光学的に音波を検出するため、背面電極が不要で、振動板1枚でマイクが作れるようになります。これによりどんな効果が生まれるかというと…。まず、音波には回り込む性質があるんです。コンデンサマイクだと振動板が2枚あるため、裏側が塞がっており、入ってきた音波は振動板の裏側に回り込むことができません。しかし振動板1枚なら、裏側が空いており、それが可能になるんですね。で、特に真横から来た音波は、同じ速さで振動板の表と裏に到達するので、機械的な感度がキャンセルさせる、すなわち音が聞こえなくなるんです。それに対し、音が入ってくる角度が徐々についてくると到達する速度に差分が生じるので感度がどんどん高まっていき、正面から来る音については差分が一番あることになるので感度が最も高くなる。こうして非常に指向性の高いマイクを作ることに成功したんです。

 

MEMSで細胞内に微粒子を導入する

鈴木 和拓・イメージ 他に産学連携で実施している、高電圧回路とマイクロアクチュエーターの集積化技術の研究などもあるのですが、それはまたの機会にするとして。もう1つ、大きなトピックスとしてご紹介したいのが、2005年12月に米国ワシントンで開催されたIEDM(国際電子デバイス会議)で発表した、MEMSを用いて新概念のバイオテクノロジーを実現するマイクロマニピュレーター技術です。MEMSには、外部から電圧をかけることで微小な振動を生じさせることができます。この振動を用いて、ナノパーティクルと呼ばれるナノサイズの微粒子を細胞内に導入する技術を初めて生み出したのです。

 この技術は、レーザー光などで細胞に物理的作用を及ぼすという従来の手法と比べて、多数の細胞を同時に扱えるといった利点があります。バイオ分野において、細胞の物理的な作用に対する反応や詳細な性質を調べる医科学分析ツールとしての応用や、将来的に特定の細胞に作用を及ぼす手法への応用が期待されます。今後は種々のナノマテリアルとMEMSにより励起される物理的エネルギーの様々な組み合わせを検証し、特定の細胞に選択的に働きかける新たな手法としての活用を検討していきます。

 また、細胞の種類に合わせた構造の最適化や、細胞を扱う以外のナノマニュピレーターへの応用も図りたいと考えています。

 IEDMは、論文の採択率が非常に低く、そもそも発表すること自体が極めて難しいんです。その中でも今回私が発表した技術はレイトニュース(速報)として採択されたもので、そうなると採択率は100件出して1本通るか通らないか。私自身、非常に名誉に思っています。発表後も、ホテルでコーヒーを飲んでいたりするといろいろな研究者たちから「面白い研究だね」と声をかけられて。重要な経験になりましたね。

 

幅広い領域の知識がラボ内に集積している

鈴木 和拓・イメージ MEMSにはいろいろな活用法が考えられ、可能性が高いものです。ただし、実際にデバイスを開発しようとすると、半導体工学だけでなく、機械工学、電子回路、さらには光学、音響学、細胞学など様々な領域の知識が網羅的に要求されることになります。

 その点、表示基盤技術は、半導体材料さらにはマンマシンインターフェイスとしてのイメージセンサーやディスプレイ技術に至るまで幅広い研究を行っていて、それぞれの分野のエキスパートが集結しています。何か考える時、相談できる人がすぐそばにいるということで、新しいものを生み出しやすいんですね。また、私はまだ入社4年目で若手なのですが、そんなことは一切関係なく自由に議論ができ、自分が発想・企画したアイテムを尊重してもらいつつ、多大なバックアップをいただくことができています。そうした風土は我々のラボにとどまらず、東芝研究開発センター全体に共通したものです。他のラボでMEMSの研究をしている方や、音響の研究をされている方なども、親身になって話を聞いてくださいますから。

 こうした恵まれた環境の中、MEMSの研究を製品化につなげるとともに、誰も発想していなかった現象や機能を、どんどん創出していきたいです。

 

「個人のやりたい仕事を自由にやらせてくれる」ことを実感

鈴木 和拓・イメージ 私の大学時代の指導教官は東芝研究開発センター出身で、在学中によく東芝時代の経験を伺う機会があったんです。正直、もともと東芝については「堅い」というイメージがあったのですが、その先生のおっしゃるには、わりと個人のやりたい仕事を自由にやらせてくれる会社だよ、と。それで会社見学に行ったところ、担当の方が「MEMSデバイスについてこれから新しい研究を立ち上げようとしているところ」という話をされていて。ぜひ一緒にやってみたい、と考え、就職を決めました。入社後、先生のおっしゃっていたことは本当だったな、と実感しています。さらに研究成果を学会や展示会などで発表し、自分の研究成果が目に見える形で残る環境が整っていて、高いモチベーションで研究ができます。

 現在、エレクトロニクスは難しい領域に来ている、と私は考えます。ひと昔前は世の中のニーズも一様でしたが、今は個人個人の満足度が人によってかなり違いますから。その意味で、これから研究者にとって大切なのは、時代の変化の流れに敏感であり、世の中で何が今、求められているかということを常に意識できることであると思います。

 それからもう1つ。学生時代は先輩なり先生なりが手取り足取り教えてくれますが、会社では皆、自分の仕事を持っていて忙しく、受け身では何も身につきません。積極的に自分自身で行動することが大切になってきます。特に東芝研究開発センターのようにボトムアップでの提案が要求されるところでは、先輩たちに「うるさい」と言われるぐらいの積極性が求められます。是非、研究意欲ある方に来てほしいですね。期待してます!

 

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